溶液中にある単体と別の元素のイオンとが存在するとき、両者の間で酸化還元反応が生じると、単体は酸化されてイオン化するのに対してもう一方は還元されて単体として析出する。このとき「還元された元素より酸化された元素の方がイオン化傾向が大きい」ということになる。どちらが酸化されどちらが還元されるかは酸化還元電位の大小に依存するので、この電位の順に元素を並べたものがイオン化傾向の順となる。
イオン化傾向が小さいほどイオンは還元され金属として析出しやすくなる。また、イオン化傾向が大きい金属でも融解塩電解などで得ることができる。
なお、イオン化傾向とは別な指標にイオン化エネルギー(イオン化エンタルピー・イオン化エントロピー)という指標がある。それは原子核に束縛されている電子が電離するのに必要なエネルギー値であり、文字通り原子のイオン化のしやすさの指標である。しかし、酸化還元反応の進む方向は単にイオン化エネルギーの大小だけではなく、イオンの溶液中での安定性や電気化学活量など化学平衡として反応が進む方向を決定づける他の因子に大きく影響される。
中学や高校レベルの理科・化学では酸化還元反応や化学平衡を詳しく扱わないので、説明を単純化して「イオン化傾向は、元素のイオン化の容易さの序列である」と定義している場合がある。しかし正確には、前述の説明のようにイオン化の容易さではなく、2つの元素のどちらがより酸化され易い(あるいは還元され易い)か、つまり酸化還元反応における化学平衡がどちらに偏っているかの序列である。
イオン化傾向の大きい順は以下のとおりとされる。厳密にはセシウム (Cs) が最大でイリジウム (Ir) ・タンタル (Ta) が最小とされるが、既述の通り指標としては正確さを欠くため、ここでは割愛する。
リチウム (Li) > ルビジウム (Rb) > カリウム (K) > バリウム (Ba) > ストロンチウム (Sr) > カルシウム (Ca) > ナトリウム (Na) > マグネシウム (Mg) > アルミニウム (Al) > マンガン (Mn) > 亜鉛 (Zn) > クロム (Cr) > 鉄 (Fe) > カドミウム (Cd) > コバルト (Co) > ニッケル (Ni) > スズ (Sn) > 鉛 (Pb) > (水素 (H2)) > アンチモン (Sb) > ビスマス (Bi) > 銅 (Cu) > 水銀 (Hg) > 銀 (Ag) > パラジウム (Pd) > 白金 (Pt) > 金 (Au)
翻訳 化学
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